皆さまこんにちは!
歯科衛生士・マイオファンクショナルセラピストの後藤真由子です。
MFTの部屋をご覧いただきありがとうございます。
皆さまは、食事中むせて、咳き込むといった経験はありませんか?
刺激的な香辛料が入っているような辛い食べ物でむせたときの、涙が出る程苦しく、辛い経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか?
一方で、食事をしていない時はいかがでしょう。
普段意識していないと気づきにくいことですが、ご自身の唾液で急にむせることはありませんか?
その「むせ」は、お口の中の筋肉(舌や喉)が正しく使えていない場合や、それらの筋肉が衰えているサインかもしれません。
お口の機能の衰えは、オーラルフレイルと提唱されるようになり、近年ではオーラルフレイル対策に向け、さまざまな活動が展開されています。
お口の機能の衰えに気づかずに放っておくと、健康状態に関わる不調のリスクが高まり、老化も進んでしまいます。
いかがでしょうか。
最近、お口の衰えを感じていると自覚がある方、気にならない方、
または自分ではいまいちよくわからないという方、実にさまざまだと思います。
実際に患者さまの中でも、「お口の機能を正しく使えているかどうかすら分からない」という方が多くいらっしゃいます。
それもそのはずです。
なぜなら、「正しい口の使い方」は学校では教えてくれないですし、学ぶ機会も歯磨き指導のような、お口の教育に比べると明らかに少ないのが現状ですから。
そこで、今回の記事では、お口の大事な機能である、「飲み込むこと」と、「むせること」の知識を深めていきます。
そして、自分の唾液でむせにくくするために必要で、大事な筋肉がわかる、セルフチェック法(エクササイズ)をご紹介をしていきます。
この記事を通して、皆さまが、お口の機能について知るきっかけになりますように。
そしていつまでも食事を美味しく楽しく食べて行けるようお手伝いができたらこの上なく幸せです。
どんな時にむせる?
皆さまは、むせるときは、どんな時にむせますか?
むせてしまうほとんどが、飲み込む回数の多い食事中ではないでしょうか。
私は、MFTを学ぶ前まではよくむせていました。
食事中もそうですが、気づくと、何もしてない時に自分の唾液でむせることもありました。
皆さまはいかがでしょうか。
不意打ちに自分の唾液でむせることがあるか考えてみて下さい。
私は、MFTを指導する立場になった当初に、「なぜこんなに自分の唾液でむせるのだろう?」と考え、自己観察をした結果、ある理由がわかったのです。
それは、むせる時は、『舌の位置』に問題があることに気づいたのです。
そもそもなぜむせてしまうのか、不思議ですよね。
むせる時は一体何が起こっているかを知るには、飲み込みの一連の流れを知ることが大事になります。
まずは正しい飲み込みのメカニズムから説明していきますね。
飲み込みのメカニズム
飲み込むという動作ですが、医学用語で、嚥下(えんげ)と言います。
いわゆる「ごっくん」です。
この、ごっくんの動作ですが、ごっくんと飲み込む瞬間の前後の動作も含め、嚥下として成り立っています。
では段階にわけ、細かく見ていきましょう。
これから、飲食物を食べる工程を大きく4つに分けて解説していきます。
※下図1を参照しながらみて下さいね。
- 食べ物を噛む(咀嚼)お口の中に取り込んだ食べ物を歯で噛み砕きます。このことを、咀嚼(そしゃく)と言います。噛み砕かれた食べ物は唾液と混ぜられ、食塊(しょっかい)という塊に作りあげられます。
- 食べ物(食塊)を喉に送る 食塊となった塊を、舌の上に集め、上顎(口の中の天井)に押し付けながら喉の咽頭(いんとう)と言う部分に送られます。ここまでの動作は、自己の意思で動かせる随意運動(ずいいうんどう)になります。
- 食べ物(食塊)を飲み込む ここで、いよいよごっくんと飲み込みが始まります。咽頭を食塊が通ると、喉のあたりにある蓋(喉頭蓋(こうとうがい))が下がり、気管の入り口(喉頭)から食塊が気管に入らないように蓋がされます。これが嚥下反射(えんげはんしゃ)と呼ばれている機能です。そして食塊は食道へ送り込まれます。この嚥下反射こそが「むせること」に関係している最も複雑な工程です。気管の入口あたりの喉頭(こうとう)は空気の通り道(気管)と食べ物の通り道(食道)が交差している交差点。食塊は嚥下反射により、気管にはいらないように食道へと反射的に交通整理をされている訳です。この時同時に、食塊が鼻の方に流れないように鼻の入口も塞がれます。この嚥下反射ですが、ほんの0.5秒という一瞬の動きであり、自己の意思では動かせない不随意運動(ふずいいうんどう)になります。私たちの無意識のうちに喉の奥では壮大な作業が行われているのです。
- 食べ物(食塊)が食道から胃へ運ばれる複雑な工程を経て、食道に送り込まれた食塊は胃へと送り込まれます。
図1
いかがでしたか。
飲み込む一連の動作をご理解いただけたでしょうか。
普段あまり意識せず行っている飲み込みが、非常に複雑な作業であり、そして一瞬で行われている大事な動作であるというのがお気づきかと思います。
むせは身体の防御反応だった
ここまでは飲み込みのメカニズムを説明しました。
では、どうして「むせ」が起きるのか、お話をしていきますね。
前述しました3.の工程の中で、何らかの問題で飲食物が、食道ではなく、気管の方に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)と言います。
誤嚥が起こり、食塊が気管に入ろうとした時に、異物を吐き出そうと身体が反応する、「防御反応」が起こることで咳がでます。
この防御反応がむせている時なのです。
むせる反射が衰えると、食べ物が気管に入ったのにも気づかず、肺炎を起こしてしまうこともあります。
このことを誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)といいます。
誤嚥性肺炎は現在の日本人の死因6位である怖い病気です。
※厚生労働省「人口動態統計」(令和3年)参考
むせを引き起こす原因である、嚥下機能の低下には、
1、加齢 2、筋力の低下 3、脳の問題 4、神経系の問題
などのさまざまな要因があります。
当院のMFTでは、飲み込みのトレーニングも行い、正しい飲み込み方を習得していただきます。
MFTにより誤嚥やむせを防ぐ対策として、2に挙げた、「筋力の低下」に対するアプローチ法が効果的です。
※MFTは口腔周囲筋の機能を正す目的であり、嚥下障害を治療するものではありません。
嚥下にお困りの方は、喉の専門家である耳鼻咽喉科の受診をお勧めいたします。
ここまでは飲み込みとむせについて説明してきました。
ここからは今回のテーマの本題「むせ」の予防に入ります。
まず、自分の唾液でむせやすいかを知るために、セルフチェックをしてみましょう。
ご自身をよく観察してみて下さい。
むせのセルフチェック
- 口で呼吸していることがある
- 食事中、口を開けて食べている
- 食べ物を口からよくこぼす
- 噛む回数が少ない
- 飲み込むタイミングがよくわからない
- 食事中水をよく飲む
- よくむせる
- 食事中ゲップがよくでる
- 早食い
いかがでしょうか。
当てはまる項目はありますか?
1つでも心当たりがある場合は、正しい飲み込みができていない可能性が高くみられます。
でも、あきらめる必要はありません。
当てはまる方も、そうでない方も、MFTでお口の筋トレをすることで、今後起こりうる問題または、起こっている問題の対策をすることで改善ができるからです。
次からは、飲み込みと舌の位置の関係についてご説明していきます。
低位舌、口呼吸はむせやすい
あまり普段は意識していないかもしれませんが、私たちヒトは常に飲み込み(嚥下)を繰り返し行っています。
何を飲み込んでいるのでしょうか。
それは唾液です。
唾液の分泌量は平均で1日1.0〜1.5リットルと言われていますので、その唾液を常に少しづつ飲み込んでいるのです。
冒頭にも出てきましたが、飲食をしている訳でもないのに唾液で急にむせる時というのは、舌の位置にも関係があります。
舌が普段正しい位置に置かれていないとむせが起こりやすくなるのです。
つまり、舌を正しい位置に休めておくことで、お口の中はむせない状態になるのです。
さて、皆様の舌はお口の中のどこにありますか?
上、下、真ん中。普段意識してないのでよくわからないという方も多いのではないでしょうか?
では、舌の位置で一番むせやすいのはどこでしょうか。
それは下方です。
お口の底に位置している時です。(この状態を低位舌(ていいぜつ)と言います。下図2)
その理由は、舌が下に位置すると喉への通り道、いわゆるのどちんこの辺りが開いている状態になっているからです。
これは、水道の蛇口が開き、水が流れっぱなしのようなもの。
お水を使わない時は蛇口をしめているのと同じで、舌も使う時以外は上顎にピタリとつけて喉に蓋をしておくことが大事なのです。
舌を常に正しい位置におくことで、喉が閉鎖され、飲食物が喉に入らないようにお口の中に保持しておくことができるのです。
既にお気づきかもしれませんが、
舌の正しい位置とは、「上」が正解なのです。
舌が正しい位置にある時は必然的に鼻呼吸が確立されています。
逆に、舌が下がると口が閉じにくくなり、口呼吸を招いてしまいます。
口呼吸は放っておくと身体にさまざまな弊害が起こる原因にもなります。
正しい舌の位置を身につけることは、身体に多くのメリットをもたらしてくれるのです。
舌の位置を正し、鼻で呼吸をする事は、身体にたくさんのメリットがあるというのは以前の記事でもお伝えしました。
そちらも是非ご覧になって下さいね。
図2
喉の蓋は閉まってる?簡単チェック方法
「舌の正しい位置」や「喉の蓋をする」と聞いても、いまいち感覚がわからないかと思います。
そこで喉に蓋をするチェック方法をお教えします。
是非鏡を見ながらチェックしてみて下さいね。
1、口を開けた状態で鼻で呼吸する
まず、口を開けて、口で呼吸を何度かしてみてください。はぁはぁと口で息を吸い、口で吐くかんじです。
あーと声を出しても良いです。
この時、喉に注目してみてください。
続けて、そのままお口を開けた状態で鼻で呼吸に切り替えてみてください。
舌の奥が少し持ち上がったのがお分かりですか?
これが、”喉に蓋をする”喉への通り道をふさいでくれている状態です。
2、かと発音する
話す時、または発声する時は舌のありとあらゆる筋肉が使われています。
「か」という音を出す時は、舌の奥の筋肉をつかい、上顎につけ、はなす時にかという音が発せられます。
この時の動きもまた、喉に蓋がされています。
何回か、「か」と発音してみて舌の奥を意識して観察して見て下さい。
3、うがいをする。
お口にお水を少量含みうがいをします。
うがいが難しい場合は、上をむくだけでも良いです。
こちらの方法は難易度が上がるのでうがいが問題なくできる場合に試して見てください。
お水が貯められているのであれば、完全に喉に蓋がされている状態です。
いかがでしたか?
喉に蓋がされる感覚がお分かりいただけたら幸いです。
これらは、舌の後方の筋肉を鍛えるエクササイズとしても非常に効果的なので、是非試してみてください。
まとめ
むせないためには、舌を正しい位置におくことが重要であることがお分かりいただけたでしょうか。
当院のMFTトレーニングでは、正しい舌の位置を学びます。
そして、飲み込みの応用では、舌の後方を挙上させたまま咀嚼をし、嚥下する練習も行います。
余談ですが、青汁で知られる会社、キューサイでは2021年に100歳100人実態調査が行われ、元気な100歳に長生きの秘訣を聞いたところ、1位が「食」に関する回答が出ています。
また、摂食嚥下リハビリセンターで研究をされている、耳鼻咽喉科の津田豪太先生も「やっぱり、口から食べている人間しか100歳生きないですよ。」とおっしゃっていたのが印象的だったのを覚えています。
舌は生きる上で大切な、食、睡眠、呼吸、話、に直結する大事な臓器です。
何もしないと衰えていく筋肉。
今から鍛え、むせを防止し、飲み込む力をつけてより豊かな人生を送れたら素敵ですよね。
飲み込みに関してもっと詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせ下さい。
また、当院では専門的なMFT(口腔筋機能療法)が受けられます。
ご自身やお子様、ご家族の方、MFTにご興味がある方は下記より承ります。
オンラインでのMFTカウンセリングを受付中です。
最後までお読み頂きありがとうございました。
歯科衛生士/マイオファンクショナルセラピスト
後藤真由子